鋼製防護柵の根入れ長を非破壊試験で確認する|要領(案)が定める測定の流れ・判定基準・報告書

道路の路肩に並ぶガードレール。支柱は地面に打ち込まれていますが、土の中にどれだけの長さが入っているかは、外から見ても分かりません。工事が終わって埋め戻されたあとに、支柱が設計どおりの深さまで入っているかを確かめる方法が、非破壊試験による根入れ長測定です。
根入れ(ねいれ)とは、支柱が地中に埋まっている部分のことで、その長さを根入れ長と呼びます。国土交通省は、この根入れ長を測定機器を用いた非破壊試験で測定する場合の要領を定めており、施工した支柱を掘り返さずに、超音波などで確かめる方法が実務に組み込まれています。
本記事では、北海道オホーツク地方で測量・土質地質調査・電子納品に取り組む株式会社ディ・エス・ジーが、国土交通省の要領と関係団体の公開情報、当社の公開情報をもとに、根入れ長測定の仕組みと、要領が定める測定の流れ・判定基準を解説します。
防護柵とは何か──なぜ根入れ長が問題になるのか

国土交通省の「防護柵の設置基準」では、防護柵を、主として進行方向を誤った車両が路外、対向車線または歩道等に逸脱するのを防ぐとともに、車両乗員の傷害および車両の破損を最小限にとどめて、車両を正常な進行方向に復元させることを目的とし、また、歩行者および自転車の転落もしくはみだりな横断を抑制するなどの目的をそなえた施設、と定義しています。車両を対象とする車両用防護柵と、歩行者等を対象とする歩行者自転車用柵に区分され、ガードレールは前者の代表的なものです。
車両用防護柵は、車両が衝突したときに突破されない強度と設置場所に応じて、C・B・A・SC・SB・SAといった種別が設定されています。設置の対象となるのは、盛土や崖、川に近接する区間、橋梁への進入部など、車両が路外へ逸脱したときの危険度が高い区間です。気象条件により特に必要と認められる区間も、設置区間の一つに挙げられています。
防護柵が衝突のエネルギーを受け止めるには、支柱が設計どおりの深さまで地中に入っていることが前提になります。ところが、支柱を土中に埋め込む方式では、根入れの部分は施工が終わると見えなくなります。設計で定めた根入れ長が実際に確保されているかを、掘り返さずに確かめる仕組みが必要になる──ここで使われるのが非破壊試験です。
参考:国土交通省「防護柵の設置基準」(平成16年3月31日 道路局長通達)
非破壊試験による根入れ長測定の仕組み
非破壊試験とは、対象物を壊したり掘り起こしたりせずに、内部の状態や寸法を調べる検査の総称です。防護柵の根入れ長測定では、主に超音波が使われます。
基本的な考え方はシンプルです。支柱の上端に探触子(超音波を出し、受ける装置)を当て、支柱の中を伝わった超音波が先端で反射して戻ってくるまでの時間と、超音波の伝わる速さから、支柱の全長を求めます。そこから地上に出ている部分の長さを差し引けば、地中に入っている長さ、つまり根入れ長が分かります。要領では、探触子で発生した超音波を支柱に効率よく伝えるために、ゼリー状の接触媒質を気温などの現場状況に応じて選び、使用することも定められています。
要領は、測定に関わる長さを次の4つの名称で区別しています。
| 名称 | 意味 |
|---|---|
| 設計根入れ長(h0) | 設計で定められた根入れ長 |
| 測定根入れ長(h1) | 測定機器により測定した根入れ長 |
| 測定支柱長(L1) | 測定機器により測定した支柱長 |
| 支柱実寸長(L) | 巻き尺等により測定した支柱長 |
測定支柱長(L1)と支柱実寸長(L)は、測定機器そのものが正しく測れているかを確かめるための値です。一方、測定根入れ長(h1)と設計根入れ長(h0)は、施工された支柱の根入れ長が設計どおりかを判定するための値です。この2段構えが、次に見る測定の流れの骨格になっています。
参考:国土交通省「非破壊試験による鋼製防護柵の根入れ長測定要領(案)」(平成24年6月)
国土交通省の要領(案)が定める測定の流れと判定基準
国土交通省大臣官房技術調査課の「非破壊試験による鋼製防護柵の根入れ長測定要領(案)」(平成24年6月)は、土中埋め込み式の鋼製防護柵(防止柵を含む)の支柱のうち、曲がり部のない直管を対象に、測定機器を用いた非破壊試験で根入れ長を測定する場合の手順を定めています。支柱をコンクリートに埋め込む方式は対象外です。
要領に沿った流れを整理すると、次のようになります。
| 段階 | 主な内容 | 基準 |
|---|---|---|
| 1. 実施計画 | 受注者が測定機器の選定、測定原理・手順などを検討し、施工計画書に盛り込んで監督職員へ提出する | ─ |
| 2. 測定機器の性能確認(埋め込み前) | 監督職員の立会いのもと、巻き尺等で測った支柱実寸長(L)と、測定機器で測った測定支柱長(L1)を比べる。防護柵の種別ごとに1本以上 | 支柱長2,600mm以下で、L1とLの差が±30mm以内 |
| 3. 支柱の埋め込み | 支柱を土中に埋め込む | ─ |
| 4. 根入れ長の確認(埋め込み後) | 監督職員が指示した支柱について、測定機器で測定根入れ長(h1)を測る。種別ごとに支柱総数の20%以上 | h1と設計根入れ長(h0)の差が±100mm以内 |
| 5. 報告 | 測定結果をとりまとめた測定結果報告書を速やかに作成し、監督職員へ提出する | ─ |
ポイントは2つあります。1つは、根入れ長を測る前に、測定機器そのものの性能を確かめることです。地上にある支柱の長さを巻き尺と測定機器の両方で測り、その差が±30mmに収まることを監督職員が確認します。もう1つは、判定基準に適合しなかった支柱の扱いです。要領の流れ図では、判定基準に適合しない場合はすべて引き抜きを実施するとされており、根入れの足りない支柱をそのままにしない仕組みになっています。
また、監督職員は受注者が行う非破壊試験に1工事につき1回以上立ち会い、検査職員は既済部分検査・中間技術検査・完成検査のときに、測定結果報告書によって根入れ長の確保を確認します。測定は受注者が行うものですが、その結果は発注者側の確認と検査を経て初めて成果になる、という位置づけです。
なお、要領には施工上の注意も書かれています。支柱の先端部に損傷や変形があると測定に悪影響を及ぼすおそれがあるため、舗装部は必ずコア抜き等で取り除いてから支柱を埋め込むこと、玉石などによって損傷が想定される場合は監督職員と協議することなどです。測定の精度は、測定機器だけでなく、施工の段取りにも左右されます。
測定者と測定機器に求められること

要領は、測定者を「測定機器の操作方法及びその評価法について十分な知識を有する者」とし、資格等(講習会の受講等も含む)を有する必要のある測定機器を使用する場合は、その資格等を有する者が測定を行うとしています。測定機器についても、測定に悪影響を及ぼさない環境下で性能基準を満たすことが求められ、報告書には機器の名称・製造会社・校正記録を記載します。
こうした測定機器と技術者に関わる団体として、一般社団法人弾性波診断技術協会があります。同協会のウェブサイトには、弾性波(超音波、衝撃弾性波等)を利用した非破壊検査装置を使って社会インフラの長寿命化に貢献することを目指す、との記載があります。あわせて、防護柵等の支柱根入れ長さ測定の測定装置として認定装置(NETISに登録されているもの)が紹介され、「超音波根入れ長測定技術者講習会」を継続して開催していることが掲載されています。
測定結果報告書に何を書くのか
要領には、別添として「測定結果報告書作成要領(案)」が用意されています。報告書は、検査職員が書類審査で読んで理解できるように、どの箇所を、何により、どんな手順で測定したのかが分かる形で作成します。主な記載項目は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 工事件名・工事場所 | 当該工事の件名と場所 |
| 鋼製防護柵 | 設置する全ての防護柵の種別(仕様記号、塗装品・メッキ品)、延長、本数。測定した支柱に番号を付けた測定位置図を添付 |
| 測定機器 | 名称、製造会社、連絡先、校正記録 |
| 測定原理・手順 | 測定原理の概要と、性能確認・根入れ長確認それぞれの手順 |
| 測定機器の性能確認 | 確認日、監督職員(確認者)、測定者、支柱長測定結果一覧表 |
| 根入れ長確認 | 測定日、監督職員(確認者)、測定者、根入れ長測定結果一覧表 |
一覧表には測定データ(波形)を整理して添付し、測定者に資格がある場合はその資格証の写しも添えます。防護柵の種別については、支柱の長さ・材質・形状・根入れ長が同じであれば同じ種別とし、塗装品とメッキ品は別の種別として扱う、といった細かな取り扱いも作成要領で示されています。
参考:国土交通省「測定結果報告書作成要領(案)(非破壊試験による鋼製防護柵の根入れ長測定)」(平成24年6月)
ディ・エス・ジーの非破壊試験への取り組み

株式会社ディ・エス・ジーは、測量、土質・地質調査、電子納品を事業の柱としており、土質・地質調査の一環として非破壊試験に取り組んでいます。当社の非破壊試験は、弾性波(超音波、衝撃波など)を用いた試験で、超音波根入れ長測定技術などの手法により、目視できない部分の健全性を評価するものです。沿革のうえでは、平成23年4月に防護柵の根入れ調査を内容とする非破壊試験業務を開始。同時に一般社団法人弾性波診断技術協会の会員(第00079号)となりました(会社概要「許認可」)。同協会のウェブサイトの会員一覧(北海道支部)にも、当社の名前が記載されています。
当社は測量から土質・地質調査、電子納品までを一貫して手がけているため、現場でデータを取得した経緯や条件を踏まえたうえで、規定の形式の成果品に整理して納めるところまでを一連の流れで行えます。根入れ長測定のように、測定の結果が報告書という成果になって初めて意味を持つ業務では、この一貫した流れが、転記や引き継ぎに伴うミスを減らすことにもつながります。
北海道オホーツク地方の道路は、冬の積雪や凍結のもとで使われ続けます。路肩の防護柵は、そうした環境で毎日使われる道路の安全設備です。目に見えない根入れの部分を確かな方法で確認しておくことは、地域のインフラを長く支えるための、地道ですが欠かせない仕事の一つだと当社は考えています。

まとめ:見えない根入れを、確かな方法で確認する
最後に、本記事の要点を整理します。
- 防護柵の根入れ長とは、支柱が地中に入っている長さ。施工が終わると見えなくなるため、設計どおりの深さが確保されているかを確かめる仕組みが必要になる
- 国土交通省の要領(案)では、超音波などを用いた非破壊試験で根入れ長を測定する。測定機器の性能確認(±30mm)→ 根入れ長の確認(±100mm・種別ごとに支柱総数の20%以上)の2段構えで、適合しない支柱は引き抜く
- 測定は受注者が行い、監督職員の立会いと検査職員の検査を経て成果になる。測定者には十分な知識と、機器によっては資格等が求められる
- 測定結果報告書には、測定機器の校正記録から波形データまでを整理して添付する
株式会社ディ・エス・ジーは、北海道オホーツク地方において、防護柵の根入れ調査を含む非破壊試験に、測量・土質地質調査・電子納品と一体で取り組んでいます。
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